大道仮説実験に関するよくあるQ&A

Q1.大道仮説実験と仮説実験授業の関係は?
A.仮説実験授業をやっていらっしゃる教師なら,地域の子ども会とか父母の集まりとかで「1~2時間で何かやっていただけませんか?」と依頼されたりすることが,近 ごろよくありませんか? そして,「はい」と返事をしたものの,よく考えると1時間で完結する仮説実験授業は?……うーん……と悩むことになります。それで,〈ものづくり〉をしたり,〈見せ物の実験〉をしたりして,なんだかとても「残尿感」が漂った経験がおありではありませんか? 「もっと仮説実験の楽しさを伝えたい」と 思ったりしたことはありませんか? そういう時にまさにピッタリなのが「大道仮説実験」なのです。

〈科学の原理原則・イメージを楽しくわかる,身につける〉ためには,仮説実験授業 があります。しかし,当然のことながらそれにはある程度の時間がかかります。それも授業を受ける参加者の反応次第で,討論が盛り上がったりすると,いつ終わるかそ のメドもたたなかったりもします。それは,お客さん本位の姿勢が貫かれていてとても気持ちいいのですが,でも,「1時間でやって下さい」と頼まれたら,困ってしまいます。

一方,大道仮説実験は,時間が短いので,科学の原理原則・イメージがよくわかると ころまではいかないかもしれませんが,それでも仮説実験のたのしさは体験できます。

〈科学の原理原則・イメージを知る楽しさを感じる〉のが大道仮説実験と言ったらい いでしょうか。しかし,それでもちゃんとストーリーがあり,自分の脳ミソを使って予想し,考える楽しさが味わえます。これが,ただ不思議な実験を見せるだけの,今, 流行りの見せ物的な「科学実験」とはまるで違います。

もちろん,依頼された時間がたっぷりあるという条件の時なら,仮説実験授業の授業書をやればいいわけです。

Q2.大道仮説実験は誰にでもできるの?
A.もちろん!です。
仮説実験授業には「授業書」があり,それを参加者に1枚1枚配ることで授業が進んで いきます。誰でも意欲のある人には,仮説実験授業がやれるように,最低限保障がされています。

仮説実験授業の「授業書」にあたるのが,大道仮説実験では「フリップBООK」で す。スケッチブックのように閉じられた「フリップBООK」を順番にめくって,それを参加者に見せていくようになっています。これがあれば,意欲のある人ならば誰にでもやれます。実験道具も楽知ん研究所で,できる限り安定供給するようにしたい と思っています。進め方も基本的には仮説実験授業の運営方法と同じですが,少し違ったコツもあることも確かです。

そのコツを得るにはどうしたらいいか?ですって……はい,そういう方のために,この「大道仮説実験ワークショップ」を開催しているのです。そこで,実際に大道仮説実験の実演を見て,自分でも実際に実演体験をしてみて下さい。文字情報では伝えられることが限定されてしまいます。自分でやってみることが,やっぱり一番わかります。

ぜひ,このチャンスを逃さずに,ご利用下さい。

Q3.大道仮説実験は大道芸なんですか?
A.よく誤解されるのですが,違います。
じつは私(宮地)は,静岡市で行われるの大道芸ワールドカップに,もう5年以上も 毎年,見にいっている大道芸ファンです。大道芸もいろんな表現方法があり,見せ物的な一瞬芸からそれこそ本格的なストーリーのある不思議な世界を見せてくれるものまで,本当に様々です。その表現方法の多様さには,いつも驚きます。

大道仮説実験は,「大道(ストリート)」でやることもあります。そして,見せ物ではなく,きちんとストーリーがあります。しかし,決定的に違うことは「芸」ではないということです。

パントマイムにしろ,ジャグリングにしろ,アクロバットにしろ,ダンスにしろ,一流のパフォーマーの大道芸パフォーマンスは,それはそれは練習に練習を重ね,習熟し,血のにじむような苦労の末,できあがっています。

たとえば,「人間美術館」という大道芸をされる雪竹太郎さんは,クラッシクバレエからはじまって,本格的なトレーニングをされてますし,実演の数時間前から,必ず一人で体を十分にほぐされ,芸に精神を集中されています。パントマイムを基本にし たたのしい芸をされるサンキュー手塚さんも,「新しいネタは,1年間やって,やっと自分のものになる」と話して下さったことが,今でも印象に残っています。まさに, これは,他人ではマネできないレベルでの高度な「芸」でしょう。

しかし,大道仮説実験は,そういう「芸」とは違います。そこには,誰もが「やって みたい!」と思えばやれてしまうくらいの壁しかありません。そこが決定的に違うところです。さらにその壁を低くする具体的なソフト,ノウハウ,そして道具が用意さ れているのです。それを提供しようとするのが,楽知ん研究所の仕事でもあるのです。

もちろん,雰囲気は,大道芸に負けないくらいのたのしいものになることも間違いないでしょう。

最近では,仮説実験授業をやったことがない学生さんたち(大学生,大学院生)が大道仮説実験の講師として何人もデビューしています。彼ら彼女らが大道仮説実験を実演しているのを見ていると,全くおしつけ的なところがなくって,とても気持ちがい いです。ヘタに教師稼業が長い人より,ずっとうまいです(^^;)。

「週末はみんなで大道仮説実験講師になろう!」というのが大道仮説実験の1つのコ ンセプトでもあります。そういう意味では,まったく普通の会社員の方でも,自営業の方でも(でも,自営業は週末も忙しいですね),セミリタイアしたビジネスオーナーや投資家の方でも(こういう方は時間があるので毎日やれます),誰でも大道仮説実験はやれます。

Q4.大道仮説実験の今後は?
A.今のところ,力学実験の〈ころりん〉,静電気実験の〈びりりん〉,真空実験の 〈しゅぽしゅぽ〉の3つは,ほぼ安定してやれますし,いろんな人がいろんな場所で実演してきた実績もすでにあります。それらは大道仮説実験の「定番」と言ってもいいでしょう。爆発実験の〈どっか~ん!〉は,取り扱いを間違えると危険な実験がありますので,まだ普及に関して研究中です。

もともと大道仮説実験は,1700年代のヨーロッパや米国での公開科学実験講座の伝統 に根差しています。そのためにそのころの公開科学実験講座の歴史を研究し,生き生きとしたイメージをつくっていくことが不可欠だと思っています。それについては,楽知ん研究所から『初等科学史研究MEMO』という私家冊子が発行されていますので, 興味のある方はご覧下さい。

いずれそういう研究の成果は『初等科学史講座 全6巻』というようなタイトルの本 としてまとめて出版される予定です。サイフォンなどの静力学,ヒドラの再生実験, レンズを使った光学実験,気体の発見,力学実験など……今後も,大道仮説実験でと りあげるまだまだいろんなテーマが,1700年代の科学史・科学教育史・啓蒙書を調べ ることで見つかることでしょう。さらに,1700年代には政治算術などの〈社会の科学 〉に関する講座もありました。今年の大道仮説実験では,「フラッグス」という世界の国旗カードゲームを使った社会の科学の入門としての大道仮説実験も初登場する予定です。

今後は,大道仮説実験の種類を増やしていくとともに,それを普及するためのサポートの仕事も充実していこうと考えています。もちろん,「大道仮説実験ワークショップ」もその1つです。